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  • SKYWARD 2018年12月号

設楽悠太 真っすぐに、攻めの心で

文/中島亮 撮影/築田純

冗談なのか本気なのか、よくわからない。「走るのは嫌い」と真顔で言う。当時の日本新記録を更新した2018年2月の東京マラソンも「レース後になにを食べるかばかり考えて走っていた」とうそぶく。

実はこのレース、走っている最中に右足すねを疲労骨折していた。「10㎞過ぎから異変は感じていました。棄権も考えましたが、家族や応援してくれる方ががっかりする姿は見たくなかった」と最後まで激走。ハートの強さも証明している。

こんな男が走るのが嫌い? そんなはずはないと、つい先日更新された世界記録について聞いてみた。ケニアのエリウド・キプチョゲ選手が、9月にマークした2時間1分39秒という異次元のタイムについてだ。順調にいけば、東京五輪で最大のライバルになるだろう。

「とてもじゃありませんけど勝ち目はない」と、これまたそっけない。しかし、やはり言葉とは裏腹に本音とプライドが顔を出す。「僕もまだ1年に1分はタイムを縮める自信があります。2020年には2時間4分台は出せるはず。マラソンは天候や体調にも勝敗が大きく左右されます。1%でも可能性があれば勝負したい。自分を信じて、行けるところまで行くだけです」

1万m で参加したリオデジャネイロ五輪では、29位という不本意な結果に終わった。「あの時は、スタート時点で負けが決まっていたようなものです。五輪出場だけで満足して、守りの姿勢になっていましたから。東京ではもう同じ轍てつは踏みません」

熱い闘志を内に秘め、攻めの走りでゴールを目指す。

設楽悠太(したら ゆうた)1991年、埼玉県生まれ。Honda 所属。東洋大学時代は双子の兄・啓太と共に箱根駅伝に4年連続で出場。3年連続で区間賞を獲得し、2度の総合優勝に貢献。Honda 入社後、2016年リオ五輪に10,000m日本代表として出場。’17年9月、ウスティハーフマラソンで1時間00分17秒の日本新記録を樹立。’18年2月の東京マラソンでは2時間06分11秒で2位、当時の日本新記録を樹立した。

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